豪華絢爛 粋を極めた飾幕
八朔祭のみどころのひとつは、豪華に飾られた屋台にあります。
祭りを華やかに彩る四台の八朔祭屋台は、江戸時代の文化年間に製作されたもので、葛飾北斎や鳥文斎藤原栄之などの有名な浮世絵師の手による飾り幕で豪華に飾られ、関東でも屈指の屋台と言われています。
全体をコの時に覆っている大きな飾幕は後幕といい、屋台を美しく飾るだけでなく、屋台の囃子方を隠す役目も果たします。鮮やかな緋ラシャ(猩猩緋:しょうじょうひ)にビロード、金糸銀糸の刺繍など、趣向の限りをこらした飾幕は、まさに動く芸術作品です。
仲町所有「桜に駒」
歌麿の名声にも負けない人気絵師だった「鳥文斎藤原栄之」の作で、春風に駒がいななき、引き綱に結わえた満開の桜が花吹雪となる・・・。そんな一瞬の美が見事に描かれています。緋ラシャに舞う600枚以上の花びらは金糸で縫い取られています。昭和10年9月の崖崩れで土砂に埋まった悲運を乗り越え、見事に蘇りました。
新町所有「鹿島踊」
鹿島明神の御託宣をふれ歩く「事触れ」の古老3人が描かれています。緋ラシャに金箔の雲、老松と玉垣はビロードに金糸を縫い取ったものです。木綿の真田紐などさまざまな高級染織された「きれ」が使われており、服飾史上でも貴重な作品となっています。葛飾北斎の下図とされています。
下町所有「虎」
ギヤマンの両眼を爛々と光らせ、真鍮でメッキされた鋭い牙と爪、四肢をふんばる姿が勇ましい猛虎。屋台が動くと縫い付けられた竹の葉がゆらめきます。浮世絵師・葛飾北斎が下図を描いた作品で、「東陽画狂人北斎筆」と落款が縫われています。
早馬町所有「牧童牛の背に笛を吹く」
当時、ビロードとともに珍重されていた緋ラシャを、赤々と燃える夕映えに見立てた作品で、葛飾北斎が下図を描いたといわれています。幕の上部からは針金に金糸を巻きつけた枝がしだれ、風になびきます。黒牛は本物の角、童子の笛は竹製といったこだわりが光ります。